島中央の山岳地、その合間に拓けた小さな土地を利用して作られたマルダの村は、狭い平地部を家屋の敷地として限界まで使っているため、空き地と呼べるような場所が殆どない。
そんな村の中で唯一の空き地といって良い場所、マルダの村の中心にある広場へと何気なくやってきたタカハシは、そこで小さな子供達が数人、何やら言い争っている現場に出くわした。
「ホントだってば!」
「嘘だよ。ねぇ?」
「うん。嘘だと思う」
といった風に、一人の少年の主張を他の子供達が呆れたように否定している。
子供の言い争いに口を挟むと言うのもなんだが、気になったのも確かだ。軽くその少年達に話を聞いてみると。
「さっき、村の外れで赤毛の女の子に会ったんだけど、なんかその子、ヘンだったんだよ。
知らない間にふっと傍に立っててさ、言うんだよ。『プリンをくれ』って」
「……プリン?」
何故そこでプリンが出てくるのか。反射的に聞き返したタカハシに、子供はこくこくと頷く。
「うん。『貴様、プリンはもっておらぬか。持っておるのなら』ーって。でもそんなの持ってるわけないから素直に無いっていったら、なんか凄い恨めしそうな顔で睨まれたあと──」
そこで子供は心底気味悪そうに顔を強張らせる。
「すぅ──って、こう、その子の身体が透けていって、気づいたら居なくなってたんだよ。……僕、幽霊を見たのかな? そうなのかな?」
村の外れ、か。
時間に余裕があったなら、一度様子を見にいってみるのも良いかもしれない。
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